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第222回 神を賛美する

聖書=詩編30編1-4節

【賛歌。神殿奉献の歌。ダビデの詩。】

主よ、あなたをあがめます。あなたは敵を喜ばせることなく、わたしを引き上げてくださいました。わたしの神、主よ、叫び求めるわたしを、あなたは癒してくださいました。主よ、あなたはわたしの魂を陰府から引き上げ、墓穴に下ることを免れさせ、わたしに命を得させてくださいました。

 

 今回は旧約聖書・詩編30編1-4節から神のみ言葉を聴いてまいります。皆さまも、讃美歌を聴かれたことがあると思います。わたしは、この10年ほど聖隷三方原病院のホスピス病棟のチャペルで礼拝の奉仕をしてきました。ここではほぼ毎日、讃美歌が放送で流されています。チャペルが始まる前に讃美歌が幾つか流されます。チャペルの時には司式者によって讃美歌が歌われます。

 チャペルで放送される讃美歌を聴くと、わたしは思わず聞き惚れて心が癒やされます。讃美歌は音楽の中ではたいへん不思議な存在です。聞く者の心が慰めを受けるのです。気持ちがホッとなります。今回は詩編30編1-4節から「賛美」についてお話しすることにいたします。

 この詩の作者は、「主よ、あなたをあがめます」と歌い出しています。この「あがめます」が、神賛美の言葉なのです。神をいと高き神として認め、尊び、あがめ、賛美し、感謝する。神は何とすばらしい、素敵なお方だ、と歌い上げるのです。これが「賛美」と言うことです。表題では、この詩の作者はイスラエルの王ダビデとなっています。しかし、ダビデは「神殿の奉献」ということはしておりませんから、もう少し時代が降ってからの人のものと言えます。

 ここに記されていることは、直接、神殿の奉献とは関わりありません。もっと基本的に、なぜ、神をあがめ、賛美するのかという理由が歌われているのです。なぜ、神はすばらしいのか。なぜ、わたしたちは神を賛美するのか。その神賛美の理由、根拠が歌われているのです。

 第1は、「あなたは……わたしを引き上げてくださいました」です。ただ「引き上げて」だけでは、何から引き上げたのか分かりませんが、4節にこのように記されています。「主よ、あなたはわたしの魂を陰府から引き上げ」と歌われています。「陰府」とは、旧約聖書では死者のいるところということです。死の淵から引き上げてくださった。死の力から解放してくださったということです。

 一般に「死」と言うと、生物学的な死を考えるのではないでしょうか。体の生活機能が停止すること、肉体の死を考えます。そして、多くの人はそこですべてが終わると考えるのではないでしょうか。しかし、聖書ではそれだけのことではありません。キリストを信じて、わたしたちの罪が赦され、キリストと1つの結ばれることが聖書の根本的な主張です。このキリストと結ばれて死の淵から引き上げられるのです。死の力から解放されるのです。これが「引き上げられる」ということ、復活を意味します。

 第2は、神の癒やしです。「主よ、叫び求めるわたしを、あなたは癒やしてくださいました」。この癒やしも肉体だけの癒やしではありません。心と魂を含む全人的な癒やしです。わたしたちを捕らえている罪から解放して、わたしたちの心と魂を広いところに置いてくださった神と共にある平安です。そこで、詩の作者は「わたしに命を得させてくださいました」と歌います。神を賛美する。讃美歌の根本にあるのは、キリストによる罪の赦しの恵みとキリストに結ばれて永遠の命の恵みに生きる者とされたという神の救済に対する感謝と賛美の想いなのです。