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第244回 異邦人の拝む救い主

聖書=マタイ福音書2章7-12節

そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。そして、「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言ってベツレヘムへ送り出した。彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。学者たちはその星を見て喜びにあふれた。家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。ところが、「ヘロデのところへ帰るな」と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行った。

 

 アドベントの季節になりました。「アドベント」とは「待降節」と訳され、クリスマスの前4週間をクリスマスを待つ時季として過ごします。キリスト教会では、この時になると会堂全体が明るくなります。クリスマスツリーを飾り、礼拝ではアドベントキャンドルと言ってローソクを1本ずつ灯して、クリスマスの近いことを示していきます。

 「クリスマス」とは、キリストのミサ、キリスト礼拝という意味です。日本ではキリスト教と関係のない人たちもクリスマスを祝っているように見えます。プレゼントを贈り合い、家族でクリスマスのディナーを囲む光景は和やかで素晴らしいと言っていいでしょう。

 クリスマスは、救い主であるキリストを礼拝することです。「キリスト礼拝」を最初にしたのは誰だったでしょうか。一番早く幼子イエスの誕生を祝いに駆けつけたのは、ルカ福音書2章に記されているベツレヘム郊外で野宿しながら羊の番をしていた羊飼いたちではなかったでしょうか。当時の羊飼いは、羊の群れを飼って流浪生活をしていました。そのため、街の人たちからは差別され軽蔑されていました。この羊飼いたちが、天使の告知を聞いていち早く「飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子」イエスを礼拝したのです。

 次に「キリスト礼拝」をしたのは、東方の占星術の学者たちでした。パレスチナの「東方」とは、チグリス川、ユーフラテス川の地域一帯を示す言葉です。かつてのアッシリア帝国、バビロニア帝国などの広大な地域です。ここには、アッシリア捕囚、バビロン捕囚などによってユダヤ教の影響が残っていたようです。

 東方の占星術の学者たちは異邦人です。しかも「占星術師」は「マギー」という言葉で、聖書では忌み嫌われていました。この人たちが「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです」と言って、ヘロデ王のところに訪ねて来たのです。ヘロデは側近の祭司長・律法学者たちに尋ねて、それはベツレヘムだと教えると共に「その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言ってベツレヘムへ送り出しました。

 東方の占星術の学者たちを導いたのは不思議な星でした。「学者たちはその星を見て喜びにあふれた」と記されています。神に導かれていたのです。その「家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げ」ました。「ひれ伏して幼子を拝み」とは、幼子イエスを神として礼拝したということです。

 彼らは、イエスを拝むと共に、東の国を発つ時から大切に持参した「宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げ」ました。献身と言っていいでしょう。礼拝は本来、神に身を献げる献身を伴います。献身を伴わない礼拝はありません。この贈り物がどれほどの価値があったかわかりませんが、彼らの献げ物によって、イエスのエジプトへの避難と当座の生活が支えられたのではないでしょうか。

 クリスマスに覚えることは「クリスマスを祝ったのは誰か」ということです。福音書は、イエスの生涯を描く時、このことをはっきり記します。イエスはその誕生の時から拒まれていたという重い事実です。「新しい王の誕生」を聴いても、祭司長・律法学者たちはまったく動きません。「新しい王の誕生」を聴いたヘロデ王はイエス抹殺に動きます。

 イエス・キリストの誕生を喜び祝って礼拝を献げたのは、人々から軽蔑されていた羊飼いたちと救いとは関係ないと埒外に置かれていた異邦人たちでした。イエス・キリストは、軽蔑されている人たち、救いの埒外に置かれていた異邦人の救い主となられたのです。あなたは、今までキリストと関係なく過ごしてきたでしょう。このクリスマスの時、あなたはイエス・キリストをどのように迎えますか。