聖書=詩編104編13-18節
13 主は天上の宮から山々に水を注ぎ、御業の実りをもって地を満たされる。
14 家畜のためには牧草を茂らせ、地から糧を引き出そうと働く人間のために、さまざまな草木を生えさせられる。
15 ぶどう酒は人の心を喜ばせ、油は顔を輝かせ、パンは人の心を支える。
16 主の木々、主の植えられたレバノン杉は豊かに育ち、
17 そこに鳥は巣をかける。こうのとりの住みかは糸杉の梢。
18 高い山々は野山羊のため。岩狸は岩場に身を隠す。
今回は旧約聖書・詩編104編13-18節を取り上げます。この詩編は神賛美の歌です。宗教改革者ルターが「創造のわざについての神賛美」と語る通り、神の創造と摂理の神をたたえる詩で、秋にふさわしい詩です。
今日、「SDGS」(持続可能な開発目標)が語られています。エネルギーの問題、気候変動の問題だけでなく、地球規模での貧困、飢餓の問題、平和的な社会の構築など総合的な取り組みを指しています。国連を中心にして各国の政府でも議論され、民間レベルでも取り組みがなされています。これらの取り組みは極めて大切で、これからの世界を考える時、最も緊急に求められている課題です。各地で行われている熱い戦争は反「SDGS」です。戦争こそ巨大なエネルギーの浪費で世界的な貧困と飢餓をもたらし、気候変動の大きな要因となっています。
「SDGS」(持続可能な開発目標)の取り組み課題の中で、根底にあるのは人の「罪」の問題です。地球の資源を我が物として欲望のままに開発・搾取してきた人間の罪に多くが起因しています。慎みを忘れた人間は、度外れた欲望を自由の名の下に勝手に処分し、世界が「神のもの」であることを忘れてきました。わたしたちは、神のいますこと、神の支配を認めて慎ましく生きねばならないのです。
詩人は「主は天上の宮から山々に水を注ぎ、御業の実りをもって地を満たされる」と歌います。神はこの世界を祝福しておられます。世界は、神がその基を据えられました。人の住む陸も神の被造物です。この陸には水の供給が必要です。水が無ければ生物は生きられません。人間を含めて「生きとし生けるもの」すべてが生きるため水を必要としています。そのため、詩人は「主が天上の宮から」地の山々に水を豊かに注いでくださると歌います。
「家畜のためには牧草を茂らせ、地から糧を引き出そうと働く人間のために、さまざまな草木を生えさせられる」。水によって草や木を豊かに茂らせ、人や動物たちの食物となる食物を豊かに与えてくださいます。それらを用いて人の生活への神の祝福を物語っています。「ぶどう酒は人の心を喜ばせ、油は顔を輝かせ、パンは人の心を支える」。人は本来、飢餓の中でカツカツに生きるのではない。「ぶどう酒」や「油」(オリーブ油)はゆとりある生活を表しています。
詩人は「主の木々、主の植えられたレバノン杉は豊かに育ち、そこに鳥は巣をかける」と歌います。「レバノン杉」は巨木で、大きな船を作る資材となり、住宅の建材になりました。人々の豊かな生活と活動を支えるものが「レバノン杉」に表されています。神は地に住む人々の豊かな生活と活動を支えてくださるのです。
今日、わたしたちの見る世界と大きく相違しています。あるところでは雨が降らず、地は乾燥し砂漠化しています。ある地域では豪雨禍が続き多くの人が死んでいます。作物は実らず、飢餓によって難民になる人もいます。化石燃料などによって地球全体が温暖化し、気候が狂い、食物の奪い合いが生じています。各地で戦争が起こり、気候変動などについて考える余裕さえ奪っています。
人間の欲望、傲慢が神の祝福をひっくり返しているのです。神の存在を否定する人たちだけではありません。ユダヤ教も、キリスト教も、イスラム教も「造り主である神を信じる人たち」です。この人たちが、神の造られた世界を認めず、自分勝手に世界を処分しているのです。この詩編は、この世界に対する神の祝福を語ることによって、人間の傲慢によって真逆の世界となっている現実を示して、神の怒りを積み重ねていることを悟らせ、告発するための詩編となっているのです。